タマを知りませんか?
「タマを知りませんか?白い子猫です。先日から帰ってきません。心当たりの方はお知らせください。待っています。トーマス、カール、モモ、ヨーコ」
子猫のタマがいなくなった。張り紙をしたが帰ってこない。
一番寂しがったのはモモ。モモはラブラドールとコリーの交配種で、一歳の雌犬。秋田から飛行機でやってきた。生まれて一月ばかりのタマの面倒を半年間見てきた。じゃれあってまるで親子のよう。寝るときも一緒だ。トーマスとモモとカールをつれて朝、晩、タマをさがした。死んだ気配はないから、車の好きなタマは来客の車で昼寝をしていて、一緒に連れて行かれたのかもしれない。タマがいなくなって、モモは靴を引っ張っていくようになった。スリッパや靴や軍手など、見つけたものを手当たりしだいにかじる。トーマスはそんなモモをおろおろしながら見ていた。
ある日、仕事から帰ってくると、うれしそうに犬たちが飛びついてきた。我が家の犬は放し飼いだが、鶏を襲うようになったころから、カールだけはつないでいる。
飛びついた瞬間、ロープが切れていることに、カールは気がついた。一目散にダッシュ!あっという間に逃げ出した。柴犬のカールは猟犬だ。牧草畑を雉や鴨を追って走る姿は壮観だ。
我が家では放し飼いで鶏を飼っている。猟犬のカールは鶏を襲う。が、シープドッグのトーマスは逃げ出した鶏を追いかけて捕まえてくれる。
カールの後をモモが追った。その後をトーマスが追う。まるでレースのように私は軽トラックで犬たちを追った。大通りを出て、路地を抜け、藪の中に踏み込んだ。行き止まり。走って汗をかいた肌に秋の風が涼しい。座り込んでしばらく思案していたら、トーマスが帰ってきた。その後をモモがついてきた。2匹を軽トラの荷台に乗せて帰ろうとしたら、カールもひょこひょこついてきた。いまだ!首輪を捕まえた。今日の捕り物は私の勝ち。やったね!
ところがあくる日、またもやカールが逃げ出した。よく見ると、ロープを噛み切った後がある。モモだ! モモが噛み切ったのだった。今度はみつからない。4~5日たった。気になって牛舎の方を探しにいったら、遊びに来ていた中学生が「茶色い犬がいたよ」という。牛小屋の入口に、カールが瀕死の状態でうずくまっていた。足をけがしている。抱いて小屋の中に入れ、傷口の手当てをして温めた牛乳を飲ませた。どこをどうさまよったのか?帰ってきたカールを見ながらトーマスが話しかける。「ふんふん、ふんふんやっぱり、帰ってきたでしょ!」犬の言葉がわかればもっと早く見つかったかもしれない。けがをしたカールを見て獣医の娘が言った。「病院へ連れて行ってレントゲンとって検査をしようか?」「自由を求めて飛び出したのだから病院の折の中へ入れるのはかわいそう。折れていたら手術してやって。」
あれから10日。カールは足を引きずりながらなおも散歩をしたがっている。モモはのびのびと走り回り、トーマスは心配そうについていく。タマはまだ帰ってこない。
