田舎のヒロインわくわくネットワーク

雪印100株運動—起業の原点・企業の責任—

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雪印100株運動—起業の原点・企業の責任—
田舎のヒロインわくわくネットワーク【編】
やまざきようこ・榊田みどり・大石和男・岸康彦【著】
創森社(2004-08-05出版)

ISBN:4883401812 283p 19cm(B6)

「手弁当でも! 」の志が支えた本作り
「安全・安心」の食品企業像を求めて。
応援し、監視し、要求する。
女性たちが株主になり、企業と食の変革にのりだした。

 2000年6月末、関西地方を中心に1万3000人を超す被害者を出した「雪印食中毒事件」は、まだ我々の記憶に新しい。その後食中毒事件の信頼回復に奔走する最中、追い討ちをかけるように起こった関連会社の「牛肉偽装事件」で、我々の中にあった雪印ブランドへの信頼は、完全に失墜した。

 本書は不祥事を起こした会社の製品をボイコットするのではなく、会社の株を買って応援・監視・要求した田舎のヒロインたちの100株運動の記録であり、雪印の社員(元社員も)たちから得た証言と、雪印乳業創業の精神を検証して照らし合わせることにより、企業の社会的責任とは何かを鮮明にあぶりだしたドキュメンタリーでもある。

 本紙以外の新聞や週刊誌の書評欄では、100株運動の社会的評価、食品企業のあるべき姿を追求した好書として、すでにいくつかの媒体で紹介されている。ここでは制作プロデュースを担当した者から見た著者のみなさんを紹介し、どんな思いで取材に臨んでいたのかお伝えしたいと思う。

 山崎洋子さん(ペンネームやまざきようこ)は、「NPO法人田舎のヒロインわくわくネットワーク」の代表であり、いまや日本の農業女性のカリスマ的存在。雪印100株運動の発案者でオルガナイザーだ。本書取材に当たっては、執筆分担の章だけでなく、時間の許す限り全員でインタビュー取材に参加しようと提案したのも山崎さん。複層的に質問を投げかけることにより、今まで見えなかったことが見えて来ることがあり、我々は取材活動の本質を経験することとなった。また校了間際のこと、イラストに描かれた牛がどこか変? となった。すると山崎さんはすばやく試験場に車を飛ばし、牛をスケッチして出版社へFAXで送ってくれたのだ。おかげで表紙のホルスタインは、デザイナーの手により、お乳をたっぷり出す健康的な牛となって現れた。現場を大切にする山崎さんならではの出来事だった。

 榊田みどりさんは食と農、食育、流通、環境問題を得意とする気鋭のジャーナリスト。家の光協会が発行する『地上』、JA全中の『月刊JA』で毎月渾身のレポートを発信するほか、全青協の研修会では講演も行うなど農業の現場を数多く歩き、今最も忙しい人だ。今回の本作りは、各地での取材が予想され、経費が掛かり、元が取れるか分からないけれど、どうしても制作に参加して欲しいと相談を持ちかけた。すると「ヒロインのファンだし、100株運動にも、雪印の再生にも興味があるので、手弁当でも参加したい!」と快諾してくれた。榊田さんがインタビューした雪印社員、関係者は約30人、コピーした『雪印乳業史』は600ページに及んだ。厳密な事実確認とデータの裏付けで、簡潔で緊張感のあるレポートが出来上がった。

 大石和男さんは、フィールドワークを得意とする京都大学の若き研究者。女性中心のわくわくネットワークでは、理事を務め、会員たちの信頼も厚い。年輩のヒロインメンバーにとっては息子のような存在であるのかもしれない。対雪印乳業への考え方、スタンスも各人各様のヒロインの間を粘り腰で取材、北海道から九州まで、インタビューしたヒロインは20人以上になった。時には農作業に忙しいヒロイン宅に泊まり込み、迷惑がられたこともあったのではないかと心配した。熱心に聞き書きした膨大な取材ノートから紡ぎ出された瑞々しい文章は、ヒロインの熱い気持ちを余すところなく語っているようだ。

 元日本経済新聞記者で愛媛大学教授であった岸康彦さんは著名な農政ジャーナリスト。食中毒事件という食品企業にとっては致命的なテーマをどのように扱うか。新聞記者時代に培った客観冷静な視点、事実認識と批判精神を備えたアドバイスはつねに制作スタッフの心の拠り所であった。岸さんが見てくれていると思うと、困難な取材場面に出会っても一歩踏み込むことができたし、フットワークが良いことも気楽に相談できる先輩という存在だった。最終章は、他の執筆者がほぼ取材を終えた今年三月初旬、全員が東京に集まり情報を交換し、どのような方向でまとめるのか侃々諤々の総括討論を行なって、岸さんが一気にまとめて書き上げた傑作だ。

 取材の期間中、事件の当事者であった雪印乳業の広報担当の皆さんは、我々の無理な要求にもひるまず、事件を風化させない、という決心で対応してくれた。自分が当事者だったらどうしただろうと、頭の下がる思いでいっぱいだ。

 四人の著者と一人の制作担当者がチームを組み、「手弁当でも!」の志に支えられ、多くの人の協力で出来上がった『雪印100株運動~起業の原点・企業の責任』。ぜひ一人でも多くの皆さんに読んでいただければ幸いだ。

          『農業協同組合新聞』2004.10/1
           島崎 幸子
          (食生活ジャーナリストの会代表幹事・元家の光協会職員)


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